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Autumn in New Brunswick -10-
Wed.18.01.2012 Posted in @Theater

11月5日、イブニング。



マチネ終了後、一旦ホテルに帰って、再び劇場へ。









劇場には、30分前には入った。



少し早めに席に座って。
ようやく、プレイビルを眺める余裕もできて。



というもの、それまでは、頭の中が、3分の2くらいは。
花や、その他の段取りのことで占められているので。


実はわたしは、常に、仕事モードなのだ。



最後の花を作り終わって、漸く仕事が終了。
そこで、晴れてプライベートになる。





わたしは、アメリカに、遊びに行っているわけではないし。
実際、何よりも、仕事をすることが楽しみでもある。


だから、これが、自分のスタイルだと思っている。





この日は、そんな風に、リラックスして席に座っていると。


もはや見慣れたNYヤンキーズの野球帽を被った、地味な服装の。
痩せた人影が、視界に入ってきた。




この舞台で演出家デビューをした、David Hyde Pierceだった。





実はわたしは、前日に、彼に挨拶をしている。

楽屋で。




おとなしい、静かな雰囲気の人で、実際、話し方もとても穏やかで。
目の鋭い、痩せた、小柄なこの性格俳優は。

そのイメージのままで、決してとっつきやすい人ではなかったけれども。
一種独特のオーラのある、知的な。


とても、素敵な人だった。


彼は、客席の入り口のところで、彼のパートナーにしてこの芝居の脚本を手がけたBrian Hargrove氏と、彼らを案内するもう一人の男性と。


しばし、客入りのことや舞台のことについて、談笑していた。


と、アッシャー係のボランティアの女性が、D.H.P.に気づいて、「Oh my God, Mr.David Hyde Pierce!」と。

ちょっと興奮した様子で、彼に話しかけ始めた。



D.H.P.は、日本での知名度こそ、そこそこかもしれないけれども、アメリカでは著名なスターで。
人気ドラマ「そりゃないぜ、フレイジャー」で名を上げた彼は、TV、舞台、映画と活躍の場も幅広くて。

とても人気がある。


で、そのD.H.P.は、アッシャー嬢には、ごく真面目に。
しかしながら、ちょっと迷惑そうに対応していた。



連れもいらしたし、何より、この日は、一演出家として。
自分の創り上げた舞台を、客席から観にいらしていたわけで。



おそらく、あまり、人目につきたくなかったんだろう。



一刻も早く、ほかの皆に気づかれる前に席につきたい、といった風で。
彼は、アッシャー嬢のアプローチを、無礼にならない程度に、軽くさえぎって。

パートナー氏と共に、わたしの席と同じ並びの、隣のブロックの通路側に着席された。





そんな一連のやりとりを見ていたら。



D.H.P.とパートナー氏を席に案内していた男性が、彼らと別れて、裏方に戻る手前で。

わたしの席へやってきて、Hi, Ms.と。


声をかけてこられた。




わたしは、少し面食らって、彼を見上げた。





まったく知らない男性だったし。
何より、唐突だったから、ちょっと驚いたのだ。


すると、彼は。


「昨日、楽屋であなたのことを見かけたんですよ。Davidと話していたでしょう?来てくれてありがとう。楽しんでますか?」と。


非常に気さく、かつフレンドリーに。


言葉を継いだ。




その彼の気さくさに、安心したわたしは。


とっても素敵な芝居で、わざわざ来た甲斐がありました、もちろんとても楽しんでます。
こちらは本当に素晴らしい劇場ですね、などと。



笑顔で返したものの。



相変わらず、この人が誰だかわからず、若干不審ではあったので。
(多分D.H.P.の関係者かエージェントかな?と思っていた)



失礼ですが、この劇場のスタッフの方なんですか?


と、聞いてみた。



そうしたら、その人は、にっこりと、笑顔で。



「いや、わたしはこの劇場のArtistic Directorなんですよ、David Saintと言います」と。



名乗られたのだった。




ほら、プレイビルの一番冒頭のページに僕の挨拶が出てますよ、と言われ。
その場で、わたしは、慌ててページを捲った。




間違いなく、ご本人だった。





まさか、そんなにえらい方とは思わなかったのだ。




David氏は、40代後半くらいの。

めがねをかけた、中肉中背の、やさしそうな外見の人だった。



ああ、失礼にもほどがある、と。
自分のうっかりと不調法っぷりに、わたしは、思わずその場で頭を抱えたくなったけれども。


当のDavid氏は、そんなことは、全然気にした風もなく。



「お会いできてうれしいです、来てくれてありがとう」と、手を差し出してくださったので。



わたしと、ジョージ・ストリート・プレイハウスの芸術監督は。



その場で、にこやかに握手を交わした。





その後、しばらく、そんなかんじで。
舞台の話などをしていたけれども。

客席が徐々に埋まってきたところで。


「じゃあ、ショウを楽しんでくださいね」と笑顔で言いつつ、彼は舞台裏に姿を消し・・・。



と思ったら。




「あ、そうだ!」と。
くるりときびすを返して、再び。



わたしのところへ、戻ってこられた。



そして。




「今日あなたがHに作った花! あんなにゴージャスで美しい花は見たことがない。本当に素敵でした。実に素晴らしかった」と。




彼は、わざわざそれだけを言いに、戻ってきてくれたのだった。







わたしは、なんというか。
その場では、もう、ドギマギしてしまって。


「うれしいです、本当にありがとう」と答えるのが、精一杯だった。





だって、そんな賛辞を、彼以外の人に。
こうして、わざわざ言っていただくなんて。

あまりにも、思いがけないことだったから。




それに。

マチネの前にわたしが楽屋を訪れたときには、David氏は、その場には確かにいなかったし。

そもそも、何で彼がわたしが花を「作った」(贈った、ではなくて作った、とはっきり言っていた)ことを知っているのかと考えると。




それはもう、Hしかいないわけで。




H本人が言わなければ、わたしが花を作っていることも。
彼に贈ったことも、誰にもわかるはずはないのだ。







とても面映かった。

でも、とても嬉しくもあった。









そうか。

わたしの世界は、彼と花のおかげで、こうやって。


思わぬ方向に、広がっていくんだな。




こんなに幸せなことってないな、と思った。






これも、彼から贈られた、とっても大きなギフトのうちの一つなんだ。




彼のおかげで、自分の人生はどんどん充実していくという実感が、しみじみと湧き出てきて。






わたしは、本当に幸福だった。






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