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Thu.12.01.2012 Posted in @Theater

木曜日、イブニング。



2回目の彼の舞台の後。







階下から、エントランスのあるラウンジに出て。


わたしは、一人で考えていた。




花をどこで渡そうかな。
そもそも今日、渡せるかしらん、と。





年末ギリギリまでランするこのショウと、年始すぐの舞台のためのリハーサルと。

急遽決まった、春の新作のための準備で。




毎日スケジュールがびっしりで、本当に、本当に忙しくて。


連日リハーサルで休む暇もないと、珍しくこぼしていた彼を慮って。
必要最低限のこと以外の連絡は、極力控えていたので。



彼の予定も、この日、彼がわたしに会うつもりかどうかも。


わたしには、皆目わからなかった。




正直、今日は彼は、もしかしたらまっすぐ帰るかもな、くらいには思っていた。






初日に、挨拶はしていたし。
前日も、ショウこそ見なかったけれども、実は会っていたし。




今日はいいや、花はスタッフに預けてこのまま帰ろう。
そうしよう、と決めて。

身支度を整えていたそのとき。






地下の舞台へ通じる内階段ではなく。


劇場の正面玄関にあたる、エントラスから。



冬の夜の、冷たい外気を纏って、彼が。




まるで風のように、素早く。




颯爽と現れたのだった。






わたしは目を丸くした。






この小さな劇場は、バックステージドアは特にないけれども。
ビル全体の通用口が、エントランスドアとは別にあって。


そのドアを使うと、キャストは一般客に会わずに、劇場内に出入りできる。





彼は、その通用口から、ほかのキャストと共に、一旦外に出た後。

一人だけ、そのまま帰宅路につかず。



わたしをpick upしに、再度。



ラウンジに戻ってきたのだった。






その時間は、丁度。
メイン・シアターで上演中の芝居のインターミッション中で。


小さなバー・カウンターが据えられたロビー・ラウンジは、幕間に。
ワインやシャンパンのグラスを手に談笑する、紳士淑女で一杯だった。




そんな中、いきなり、外から入ってきた。
2メートル近い長身の彼の姿は、とても人目を引いた。




もっとも、彼自身は。

いつものように。


そんなことには、ちっとも、頓着していなかった。





彼は、わたしの名前を呼びつつ、人ごみをかきわけて。




あまりにも吃驚して。

その場から動けないでいるわたしのところに、まっすぐにやってきて。



枝ものを織り交ぜた、大きなブーケを自分の腕に与かると。





花をじっと見下ろした。



そして。




真理子、これはwonderful workだ、と。






非常に端的な感想を、口にした。









今まで、数多の花を彼に作ってきて。


種種様々な賛辞の言葉を、聞いてきたけれども。




彼に、自分の花を。


"work"と評されたのは、このときが、わたしは初めてだった。




そして、その言葉は。


新鮮な驚きを伴って、わたしの心身を、文字通り、震わせた。





わたしは、一瞬、何の反応もできず。




そのまま、しばし、呆然としていた。






周囲の人々のざわめきも、天井の、年代もののシャンデリアが放つ、やわらかい灯りも。



ロビーに飾られた、煌くクリスマス・ツリーの電飾も。





視界から遠く、背景の中に、溶け込んで。



消えていくような感覚があった。




120112.jpg





その後。


彼に促されるままに。



コートを羽織って。



二人で、劇場を出て。



一緒に連れ立って帰った道すがらに、何を話したのかも。





もはや、その細部は殆ど忘れてしまっているけれども。





あのとき、彼が。




きっと、何の気なしに発したかもしれない、あの言葉だけは、まるで。






今、この一瞬前の出来事であるかのように。



鮮明に。



耳に甦ってくる。








わたしには、彼の、あの言葉はまるで。






天啓のように、聞こえたのだ。






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