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Autumn in New Brunswick -2-
Mon.14.11.2011 Posted in @Theater


ベンチに座って。



ぽつぽつと点灯を始めた、オレンジ色の。



街の、柔らかな灯りを眺めていたら。




通りの向こう側から、長身の人影。








彼だった。






111114-1.jpg






濃茶の皮のジャケットに、モス・グリーンのパンツ。
いつもの愛用の、薄手のマフラーを軽く喉元に巻いた。


見慣れた、眼鏡姿で。




こちらへ向かって。



ゆったりと、歩いてくる。





てっきり彼は、劇場内にいるものだと思い込んでいたわたしは。




あまりに予想外の方向から、彼が現れたもので。





戸惑って、一瞬。





彼のことを、見ないふりをしてしまった。









彼は、微笑んで。


わたしの名前を呼んだ。






わたしは、立ち上がって。


ゆっくりとこちらに歩いてくる、彼の方に。



歩み寄っていった。





111114-3.jpg





彼は、両腕を広げて。

わたしの体を抱きとめると、いつものように。



頬と頬をつけて、キスをして。




よく来たね。元気そうだ。

フライトはどうだった?



と。




常と変わらぬ、ごくごく穏やかな調子で訊ねた。






ひとたび舞台に立つと、ほとんど常にテンションが高い彼は。

いったんステージを降りると。


本当に、穏やかで。



体の大きい人だけれど、挙動は静かで。

いつもゆったりとしていて。


元々の声も、とても太くて深く、豊かではあるけれども。



だからといって、大きな声も、ほとんど出さない。





まとうオーラも、とても優しく、温かい。





だから、わたしは、いつも。



直前まで、どんなに緊張していても。

どれだけ、心臓が高鳴っていても。




彼の胸に抱かれた途端に、落ち着くことができる。





彼の腕の中にいると、いつも。



温かい繭に包まれたような安心感がある。







わたしは、父親の愛情をあまり知らないで育ったけれども。


お父さんの優しさっていうのは、きっと。



こういうものなんじゃないか?と。




彼といると、いつも思う。





111114-2.jpg






とても綺麗な、ほんとうに、小さな町なのね、と。


わたしは、彼に言った。





そうだろう?

と、彼は微笑んだ。






あなたは、前にも来たことがあるの?






いや、僕も、1ヶ月前に初めて来たんだ。

たった一月だけの公演だからね。






そして、劇場を振り仰ぐと。





素敵な劇場だろう?と。



笑みを湛えた表情のまま、彼の傍らに立つわたしを、見下ろした。






111114-4.jpg





とても小さくて可愛いわ。

わたしは好きです。







そう言って、わたしは、彼の顔を見上げた。







彼は、いつものように。



彼の癖で。


首をほんの少し、左に傾げて。





わたしの顔を見下ろして、穏やかに微笑んでいる。










小さな小さな田舎の町の、黄昏時。



周囲には、わたしたち二人のほかに、誰一人いない。




静かな静かな、やさしい時間。








二人だけの。







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