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Heart to Heart
Thu.01.09.2011 Posted in @Theater




彼は。




客席に向かって、深々とお辞儀をした後。



顔をあげて。




舞台を終えた、つまり、仕事を終えたプロとしての。

少し高揚した、そして。




この上なく充実した微笑みを浮かべた表情のまま。




舞台に向かって、あらん限りの力で拍手を送っているわたしを。







まっすぐに見た。









以前の自分なら、もしかしたら。



戸惑ったかもしれない。








けれど。





この期に及んで、もはや。





わたしは、驚くこともなく。







ごく自然に、彼に、微笑みを返した。









すると。






彼は、さらに、微笑んで。










わたしにだけわかるように、彼の。



わたしが愛してやまない、あの。





限りない繊細さを内に包んだ、彼独特の。



素の笑顔で、微笑んで。







そして。






わたしにだけ、わかるように。




ステージから。




わたしに。










Thank you,



と、言ったのだった。












これまで、何十回となく、彼の舞台を観てきて。



こんなことを、彼が客席に向けてするのを見たのは、わたしは。




初めてだった。












でも、驚かなかった。













不思議といえば不思議、でも、もう。






わたしと彼にとっては、ごく自然なことのように思えた。












その瞬間、わたしにだけわかるように。



わたしにだけいつも見せる、素顔に戻っていた彼の。




いつもの、優しいけども真剣な、あの眼の表情が。







今も、はっきりと。



この目に焼きついている。







忘れられない。





あの幸福感。




達成感。




あの一体感。






あの充実感たるや、言葉にはできない。




この先一生、きっと忘れることはないだろうと思う。









なんだろう?



単なる愛情、というのとは、ちょっと違う。





無論、愛はある。


あるけども、それと同時に。






わたしたちが、あのとき共有していたのは、なんというか。





あえて言うなら、同志的な。


ある意味、共犯的な、といっても良いかもしれない。





そういう類の、一体感だった。







彼とわたしだから、共有できる何か。


わたしと彼だけが、作り出すことのできる何か。



他の誰とも、成し得ない何か。








そのことを、お互いが認識していることを、彼は。


あのとき、はっきりと、わたしに。




示してみせたんだと思う。






ある種の、パートナーシップ、だろうな。












そういうものが、彼とわたしの間にあることは。

それまでも、なんとなくは、自分でも感じてはいたけれども。





彼は。






それこそが、わたしと彼を。



しっかりと結び付けているのだということを。







それこそが、他とは明らかに違う。



この世で、唯一無二の。





何よりも強い、わたしたち二人の間の絆であることを。








わたしと彼だけにわかるサインで、はっきりと伝えてくれたのだった。











わたしたちが、完全に対等になった瞬間だった。











・・・正直。



もう、ここで死んでも良いな、とさえ思った。








だって、これ以上に幸福なことなんて。


この世に、ほかに、あるだろうか?








愛する人に。






こんなにも大事にされて、これ以上。







一体、何を望む?














・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・












その後、どうしたかって?










Thank you、の後?





彼はね。










泣きそうな顔で。
(多分そんなだったと思う)



彼を見上げる、わたしの目を見て。






もう一度、微かに頷きました。










そして、何かを決意するように。





形の良い顎と口元を、こころもち、ぐっと引き絞った。









そして、もう一度、わたしをじっと見て。





にっこりと微笑んで。








今度は、声を出さずに、唇だけを動かしたんです。











わたしの名前と。






そして、




もう一度。








Thank you、








と。






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