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■MOVIE■『ダークナイト』
Sun.21.09.2008 Posted in Movie

dark.jpg



ゴッサム・シティーに、ある日忽然と現れたジョーカー(ヒース・レジャー)。

彼は、マフィアたちに成り代わってバットマンを追い込むゲームを開始した。

ジョーカーとの戦いの中、遂にゴードン警部補(ゲイリー・オールドマン)も凶弾に倒れ、ブルース(クリスチャン・ベール)は、遂に、バットマンの正体を明かすことを決意する。

しかし、それを制したのは"光の騎士"として市民からの人望を集める新任地方検事、ハーヴィー・デント(アーロン・エッカート)の意外な行動だった・・・。




クリストファー・ノーラン監督、クリスチャン・ベール主演による前作『バットマン・ビギンズ』の続編。
脚本はクリストファー&ジョナサン・ノーラン兄弟によるもの。

本作撮影後に、ジョーカー役のヒース・レジャーは急逝。


原題は『The Dark Knight』。





ヒース・レジャーは幸せな人だったと思う。


役者ってのは因業な人種で、一見どんなにシャイに見えようが、実際に、ご本人がどれだけ大人しかろうが紳士であろうが。

俳優という職業を選んだ時点で、これすなわち自己顕示欲とエゴの塊だ。

彼らに直に接してみなさい。
それがよくわかる。



彼の死因はよく知らない、ジョーカー役に入れ込みすぎたが故に薬を多用し、結果オーバードゥースで死んだと一時は騒がれていたが、多分それは違うだろう。

その後ポツポツと証言が出てきたように、おそらくあれはただの事故なのだ。
本人がどんな悩みを抱えていたのかはわからないが、職業的なプレッシャーなんて、そんなもん。

働いていれば誰にだってある。

そんなときに睡眠導入剤、あるいは睡眠薬を服用するのなんて、何も全然、特別なことでもなんでもない。

飲んだことがない人なんているのか?
しかも、彼が生活していたのはアメリカなのだ。


不幸な偶然が重なりあった末の事故っていうのが、おそらく、彼の死の真相なんだろうと思う。


彼の衝撃的な(に、見える)死を、この映画の広報の為に大いに利用した製作元と配給会社は、天晴れだ。
実にいい仕事をした。

ちっともあざとくなんかない。

どんな手段を使ってもいいのだ、できるだけ多くの観衆に彼の演技を見せることが、俳優ヒース・レジャーへの何よりの供養だ。
手向けの花だ。

同じ映画人としての、仲間への愛だ。

誰が何と言おうと、わたしは彼らの姿勢とスタンスを全面支持だ。
その腹の据わりっぷりこそがプロというものだ。


彼らの思惑通りに、観客は、映画の中のジョーカーの混沌と、将来を嘱望されていた若い演じ手の死を結びつけた。

彼の遺作となったこの映画は、おそらくは2008年最大の興行成績を叩き出すだろうと言われている。


仮にも「俳優」にとって、こんなに幸せな最期があるだろうか?

ないだろう?



彼は俳優としての才能に溢れていた。
彼には、誰もが認める、彼にしかない個性と実力があった。


この作品は、彼にとって、最高の花道だったに違いない。



001.jpg


映画としては、ヒロイン(一応)のレイチェルのパート以外はほぼ完璧な出来。

脚本は見事。

アクション・シーンは、相変わらずそんなに見せ方がうまくない。
が、前作の鈍重さと比べると、天と地ほどの差があり。


キャストは皆、嵌りすぎくらい嵌っており、言うことなし。

この映画の肝は、ブルース・ウェイン(The Dark Knight)とハーヴィー・デント(The White Knight)の相克と対立。
そして正邪を超越したところで、ただひたすら混乱を撒き散らすジョーカーという虚無。

この三者の三つ巴であって、ほかのキャラクターは、言ってみれば、添え物のようなものだ。

にも関わらず、マイケル・ケイン演ずるアルフレッドとゴードン警部補役のゲイリー・オールドマンは素晴らしい。
これは、彼らの演技力と、監督の愛に溢れる視線ゆえだろう。


三つ巴の中では、ヒース・レジャーと、(特に"生ける骨格標本"に成り果てた後の)アーロン・エッカートがあまりに濃くて、その煽りを食らったクリスチャン・ベールが、若干影が薄い。

でも、それでいいのだ。
なんてったって、彼は"The Dark Knight"なんだから。


三者三様の、自己演出の在り方そのものも見所。

それぞれが抱える強烈な自己愛、その自己矛盾・自己撞着のはらみ方。
(もっとも、ジョーカーに関してだけ言うなら、彼は終始首尾一貫している。
それが綻びかけるのは、ほんの一瞬だけ。
洋上に浮かぶフェリーで、爆発が「起こらなかった」ときだけだった)

他者及びメディアへの、それら顕在化の方向性が、非常に現代的。


彼らは、互いに相互を補完する鏡なのだ。
互いに、どちらが欠けても存在が成り立たない。


衣装も完璧。
紫と緑を基調にしたジョーカーの衣装のハイセンスなことといったらなかった。



「人は一押しで堕ちていく」

そう言ってジョーカーは高らかに嘲笑うけれども、哄笑している彼自身は、その瞬間、実は逆さに吊られている。

と思う間に、カメラが反転し、いつの間にか、醜く頬を引き攣らせて笑う彼の顔を正位置で捉えて観客に見せつける。

上も下も、正も悪も、虚も実も、表も裏も。
そんなもんに意味なんかあるか?とでも言わんばかりだ。

なんて意地の悪い。


03.jpg


総合病院爆破のシーンは、この映画の白眉だ。
あのタイミングのズレの粋なことと言ったらなかった。

この監督は、見得とハッタリをよく知っている。


フェリーのシーンはベタだが、やはり美しい。
一筋の救済の光と、未来を象徴するやりとり。

一番暗いのは、確かに、夜明け前なのかもしれない。




この映画のヒースは凄い、異論はない。
見るからに幸薄そうで、長生きできない臭がプンプンする。


観客は、彼の演ずるジョーカーの虚無と混沌に、若くして亡くなった彼の最期とそれまでの人生を思わずにはいられない。

実際の彼の実人生がどうであったか、そんなことはもはや関係ないのだ。
皆が勝手に、彼の「物語」を作ってくれる。


役者冥利に尽きるだろう。



もう一度言う、何度でも言おう、ヒース・レジャーは幸せな俳優だ。

彼が生涯をかけて愛した「映画」は、彼に最高の花道を用意した。


02.jpg


彼が作り上げたジョーカーは、決してピカレスク・ヒーロではない。
悪党でもない、凶悪というのともまた違う。


ただひたすらに暗黒、ひたすらに虚無。
混乱のためだけに混乱を作り出し、放りっぱなしで何ひとつ回収しない。

背中を丸めてニタニタと人を愚弄する。


あらゆる善や正義は、単なる「信仰」に過ぎない、彼の言動は、そう示すためだけのものだ。
そうして、その「信仰」の、「信仰」を支える「社会」の、「社会」を構成する一人一人の内面の脆弱さを、これみよがしにあげつらい、嘲笑う。



さぁ、じゃあ、どうすればいい?


わたしはどうする?
そしてあなたは?



・・・彼が演じたのは、「そこにいるあなた」であり、「ここにいるわたし」なのだ。



彼は人間の業を肯定し、「現代の人間」を演じて観客の心を掴んで。

そして、去った。






さようなら、ヒース。



有難う。




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comments

最高の花道か~。。
しかも最後の役が、今この世界に生きている全ての人の心の中に、いやがおうでも波紋を起こさせるようなキャラクターだったってところも、ヒース・レジャーの底知れなさというか、俳優としての業みたいなものを感じてしまいます。
(MARIさんが言うように、これもこちら側が勝手に作った「物語」に過ぎないのかもしれないけど。。)
しかし、こういう何かを説明しようとか教えようとかじゃなく、存在そのものによって喚起されるものは、一番ストレートに心に響きますね。
ああ、映画ってほんと素晴らしい笑!!

みいこさん

アーティストってのは、大体皆、自己顕示欲の塊だと思うんですよ。
別に全然悪い意味じゃなくて、彼らは自分の内にあるものを見つめて、外部に向かって発信するのが仕事なんで、自己愛の強さも、言わばその才能のうちなわけです。
わたしの仲良しの某おっさんも、そりゃもう、ものすごいナルシストですもの。
でも、才能と実力がきっちりありさえすれば、ナルシシズムそのものが非常に強い魅力というか、吸引力になり得るわけですよ。

わたしはヒースには別に思い入れはないですし、この映画と彼の死には、特段の関連性はないと思いますよ。てか、そんな物語を両者の間に介在させるのなんざ陳腐の極み、ロマンも大概にしないと作品鑑賞の邪魔じゃ、とすら思います。いや、わたし自身が超ロマンティストなんで、自戒を込めてね(笑)

でもこの場合は、そこをわかってあえて乗ってやるってのが、故人に対する何よりの追悼になるかな、とも思うんです。
てのは、アクターズ・アクターの典型のようなヒースが、自分の死について、ここまで大々的に話題になった(なっている)ことを嬉しがらないわけがないだろうと思うから。

死して伝説となるって、役者人生的には最高のオチでしょう。
若くして不慮の死を遂げたという客観的事実は別にして。

アメリカでは彼の死因は医者から処方されたお薬の飲み合わせによる不幸な事故として、彼が飲んだ薬の量と種類も全て発表されていましたよ。
驚くくらい、わずかな量でした。
本当に怖いのは、このニュースがあっという間に葬られてしまった事です。製薬会社の圧力によって、翌日から彼の死因については全く語られる事がなくなってしまったのです。同じ理由で、アンナ・ニコール・スミス(元プレイボーイのモデル)が亡くなった時も、あっという間に死因の詮索がストップされました。

遺族が訴える、という話もあったのですが、これもすぐに消えました。

ごく普通に別々の医者によって処方された別々の目的の薬を飲み、命を落とすとは彼は思っていなかったはずです。(実際、彼が飲んだ薬は一人の医者がすべて処方する可能性もある、と言われています。)

自らを救おう、健康になろうと思っての行為で死んでしまうなんて、怖いですね。


yokoさん

>翌日から彼の死因については全く語られる事がなくなってしまったのです

『The Constant Gardener』を、思いっきり思い出しました。
日本では、製薬会社って政治献金の額が半端じゃないそうですよ。
アメリカもやっぱりそうなんでしょうか。
大体薬って、ものすごく原価は安いらしいです。なんかこう、医薬関係のビジネスって、大金が動くせいかどうもダーティーなイメージがありますよね。
製品になるまでに絶対人体実験をしてるだろう、とか。一体どこで、誰を使ってやってるんだそれ、とか。
怖いですよね。

1月にNY1でやってたPhantomの20周年特番のVTRを観ると、繰り返し繰り返し、ヒース死去のニュースやら彼のアパートメント前のリポートが延々写るんですよ。
あのときはまだ、死因は不明(でも多分オーバードゥースだろう)って報道のされ方でしたね。

彼は若手俳優の中では一番の演技派だったと思います。
実際キャリア的にもアタマ一つ出ていましたから、ほんとにね、ご本人はこれからやりたいことがたくさんあったでしょうね。

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