こちらは、言わずと知れた、故白州次郎・正子氏の旧宅です。
昔は、白州正子さんの凛とした文章が好きで。
学生の頃、彼女の名著・『隠れ里』を片手に、琵琶湖畔をうろうろ、とかね。
そんなことをしたりもしておりました。
もっとも、今は、どちらかというと。
白州正子さんご本人よりも、周辺の人物。
青山二郎とか、小林秀雄、それこそ夫君の白州次郎さんの方に、興味がありますけども。
白州正子さんに関しては、お能や古典の話よりは、むしろ。
骨董や花にまつわる逸話の方が好きかな。
武相荘は、戦前の関東の農家そのまんまの作りでね。
どちらかというと、大らかで、骨太な作りです。
印象としては、無骨と言ってもいいかも。
こういう旧い農家っていうのは、下手すると民藝調になりがちなところですが。
そこはさすがに住み手の、繊細な感性がね。
ただの「民藝」に堕ちることを許しておりませんね。
・・・ああ、誤解のないように申し添えておきますが。
わたしはね。
李朝の白磁や家具類も好きですし。
柳宗悦氏についても、高く評価しているんですよ。
でも、「民藝」ってのは、あまり性に合わないんです。
「民藝運動」にも興味がないです。
いやほら、田舎くさいものは苦手だからさ(笑)
こちらは、何と言っても個人宅ですし。
出自が元華族様とはいえ、戦後は色々ご事情もおありになったのかな、とも思いますが。
お庭の方は、多分大分切り売りされておられるような気がします。
花関係の写真集で見られるような景色は、残念ながら一部にしか残っていません。
でも、素敵ですけどね。
併設されたカフェは、納屋かお蔵かを改装したって雰囲気で。
梁が太く、天井が高く、大変落ち着きます。
コーヒーもとても美味しいです。
白州次郎氏と正子氏は、それぞれ非常に自立したご夫婦だったようで。
お互いに独立独歩型で、あまり一緒にいることもおありではなかったそうですがね。
でも、この家の住みこなし方を見ていると。
お二人は、感性の根っこの部分が共通だったんだろうな、と思いますよ。
同志として、ソウルメイトとしてつながっておられたんだろうな。
偕老同穴だったんだろうな、と。
そんなかんじがする。
規模が小さいですし。
骨董も個人蔵のものなので、センスは素晴らしいですが。
概ね、とても渋め。
わざわざ遠方から訪ねるような場所でもないとは思いますが。
でも、東京近郊に在住の方だったら、たまにね。
散歩がてら行ってみるのもいいのではないでしょうかね。
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