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■MOVIE■ 『母なる証明』 ★★★★
Fri.20.11.2009 Posted in Movie

mother1.jpg



韓国の、とある片田舎。


漢方薬店を営む母(キム・ヘジャ)は、一人息子のトジュン(ウォンビン)と静かに暮らしていた。

ある夜、女子高校生のアジョンが惨殺される事件が起こる。
トジュンは殺害される直前の彼女の姿を見ていた。

容疑者として警察に拘留されたトジュンを救おうと、息子の無実を信じる母は、たった一人で真相に迫
ろうとするのだが…。



監督・原案は、『殺人の追憶』『グエムル/漢江の怪物』」のポン・ジュノ。
本作は、3年ぶりの長編となる。


原題は『Mother』。





突然ですが。


”ピュア”とか”イノセント”って言うとね。

皆さん、どのようなイメージを持たれますかね?



多分。

殆どの方は、この二つの語に、どちらかというと。
ポジティブな意味合いを、感じておられると思うんですよ。


特に、日本語では。




でも、本当にそうか?
本当にそう思うか?


あんた、ほんとのとこ、一体どう思うよ、って聞かれたら?



どうですか?



どう答えます?




mother3.jpg



この物語に出てくる母と息子は、二人とも、揃って。


ものすごく、イノセントで。
とことん、ピュアなんですよ。



たとえばね。

劇中、息子を評して、「あの子は小鹿のような綺麗な瞳をしている」って台詞を。
母ちゃんが隣人に言わせるシーンがあるんですけども。


おいおい、それ、アンタも同じだ、と。


スクリーンを見ている誰もが、多分。


画面の母ちゃんに向かって、突っ込むと思うんです。




たとえば、冒頭。

薄野原で母ちゃんが。

茫洋とした手振りで、踊りともなんともつかない動作を繰り返す場面が出てきますが。


このシーンの、彼女の恍惚とした表情ってね。
後に描写される、池で無心にゴルフボールを探したり。

夜道で姉ちゃんを追いかけ回すときの息子の顔と、そっくりです。


また、ラスト近く。

廃品回収業者のおっさんに息子をなじられて。

いきなり逆上して、巨大なスパナで彼をめった撲ちにするところとかね。


ああ、なるほど、息子が「馬鹿」呼ばわりされるごとに、途端にキレて。

暴れる姿を再三撮っていたのは、この場面のための伏線だったか、と。




そう。


実にそっくりなの。

この母子は。




純真無垢って言うと、綺麗ですけどね。


イノセントでピュアっていうのは、そんなにポジティブな意味合いばかりでは、決してない。



なぁんにも考えていない。

考えられない。


その虚ろな瞳には、自分以外の何ものも写さない。


そういう種類のイノセンスだったら、一体、どうするんだ?



極端な純粋さって、ほとんど倒錯と紙一重っていうか。

ただひたすらに、はた迷惑だ。







イノセンスとピュアネスっていうのは、突き詰めれば究極の。

エゴイズムでもある、と。



そのあたりの、明文化はなかなかしにくいけれども。


純なイメージに対する、何ともいえない落ち着かなさというか。

言葉の持つイメージによる、意味の転換の強引さというか。

刷りこまれたイメージの持つ安直さへの違和感というか。


コトの本質的な意味を問わない安易さに対する反発、とかね。



そうした実に座りの悪い、ある種の「気色の悪さ」を。


本作は、非常に明確に、丹念に。

時間をかけて、あぶり出して行きます。




母性愛ってヤツだってね。


行き過ぎると、そりゃもう。

ただひたすら、気持ちが悪いものですよ。


それはもう、吐き気すらおぼえるほどに。



なにせ、ご当人らには、何ら悪気はないんだから。

始末に負えん。


彼女らには、彼女らなりの必然性というものもあるしね。


そのへんも、この映画では。
きっちりと説明をしているところが、凄いと思うんですけどもね。





わたしは、「密着母子」ってのが、たいへん苦手で。

あんまりにも仲のよろしい母娘や母息子を見ると、その場から踵を返して。

逃げ出したくなるんです。


肉親間での度を超した愛情って、傍から見てたらね。

殆どホラーだもの。



母子間の癒着って、実際。
古典的なホラー・ネタでもありますよね。

いわゆる、”Great Mother”ね。




それでも、母と娘なら、なんぼかましで。

というのは、やはりなんといっても自分自身が、「母の娘」でもあるので。

母の愛の鬱陶しさや、娘に対するある種の執着っていうのが、わからなくもないからだと思うんですね。

アルモドヴァル監督の『ボルベール』なんかも、母と娘の、ドロドロと濃ゆい愛憎を描いていましたけども。
あれなんか、とっても良かったしね。



が、しかし。

母と息子ってなると、そこは異性であるからして。

近親相姦的な匂いがしてくるのが。

どうにも、気味が悪い。




ポン・ジュノ監督も多分。

このあたりの微妙な感覚は、持っておられるんだと思います。


というのは、非常に巧みに。


母の愛情というか執着というか。
「母性」というものの底に、軟体動物のようにじっとりと蹲る。

何とも形容のしがたいこの本能の、ダークサイドの。

感覚的な薄気味の悪さを。



例えば、刃物からねっとりと滴る血液、とか。
漢方薬の束を切るときの、必要以上に大きな効果音、とか。

廃品回収業者のあばら家を尋ねるときに、泥水の中にずっぽりと嵌る靴、とか。


一面の枯れ薄野に吹く、うそ寒い風の音、とか。


観客の背筋を逆撫でするような、「感覚的」な映像で、繰り返し。

実に粘着に、畳み掛けるように撮っていましたからね。


ああ、この監督は、五感の鋭い人なんだろうなァ、と思った次第。




mother2.jpg





全然ミステリーではないし、別にね。

母性愛を描いた映画ってわけでもないです。



「無償の愛」とかって惹句に至っては。


はっきり申しまして、ミス・リードも良いところです。


全然違うぞ。


母は凄いとか、母強しっていうのも間違いです。
そういんじゃないのです。




あえて言うなら。

本作は、人間の本能の底が湛える。

ぽっかりと空虚な闇を描いた、ダーク・コメディかな。


箍が外れると、ここまで行ってしまう、という。
ピュアでイノセントて、箍が外れた人間って、全然美しくないぞ、とか。



これはそういう映画。




おもろうてやがて悲しき。

悲しきっていうか、うら寂しき、ですかね。





傑作です。

万人にはオススメできませんが、じわじわと「来る」映画です。


テーマは明るくはないですが。
というか、はっきり言って「鬼畜系」ですが。


娯楽映画としての一線はちゃあんと守っていますので。

その点は、ご安心ください。



結構笑えるシーンも盛りだくさんです。

笑った後に、震撼としますけど。



脇のキャラも、面構えよし演技よし。
役者は皆、たいへん上手いです。


カメラよし、脚本に至っては唸るほど巧み。

特に、”嫌なことを忘れられる太股のツボ”のエピソードは秀逸で。
ラストで、バスの中に呆然と座る母ちゃんが、やにわに。

スカートを捲り上げて、ぶっすりと鍼を刺して。

直後に、バスの中のおば連の狂乱ダンスにゆらゆら参入していくのを。

ぐらんぐらん揺れるカメラワークで舐めていくシーンには、心底痺れました。


実に素晴らしい。


伏線たるもの、こう描くべきじゃ。


皆、見習え!




というわけで。

とても面白いので。
(ある意味)




体力が充実しているときに、是非どうぞ。



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comments

香る映画

この映画、見ていないのですが
細かく内容を聞きまして、というか最後が知りたくて
ねほりはほり友人に聞きました。
隠れウォンビンファンだったもので。笑
彼が、この作品を復活第一弾に選んだことが
なんかすごいな~と思ったしだいです。

そして、ボルベール!
あの強烈な色と香り(がしそう)
そして、あの♪ボルべェ~ルゥ♪という歌も
耳に残り、親子のというか家族の映画として
私は、とっても大好きです。

この映画も見たいのですが、その前に
「アンヴィル」が見たくて^^;

やっぱり笑える映画をとってしまう私は
ダメですね。。。(><)

yuricoさん

わたしはアジア映画と邦画って、まずほとんど観ないんですよ。この映画は招待券をいただいたんです(笑)
なもので、ウォンビン?誰それ?ってなレベルで。
でも彼、とっても上手かったですよ。

ボルベール、素晴らしかったですよね。
アルモドヴァル監督の撮る映画って、わたしは昔からものすごく好きで、たぶん、彼の美意識に自分の感覚がフィットするんですね。
大好きな監督の1人です。

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