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■MOVIE■『ノーカントリー』 ★★★★★
Tue.18.03.2008 Posted in Movie

nocountryforoldmen_bigposter.jpg

1980年代、アメリカ、テキサス。

メキシコ国境に近い砂漠でハンティング中に、偶然、死体の山に出くわしたルウェリン・モス(ジョシュ・ブローリン)は、大量のヘロインと現金200万ドルが残されているのを見つける。

危険を承知で大金を奪ったモスに、すぐさま追っ手がかかる。
必死の逃亡を図るモスを確実に追い詰めて行くのは非情の殺し屋アントン・シガー(ハビエル・バルデム)。
そしてさらにもう一人、厄介な事件に巻き込まれたモスを救うべく、地元の老保安官、エド・トム・ベル(トミー・リー・ジョーンズ)が、二人の追跡を始めた・・・。


第80回アカデミー賞で、ジョエル&イーサン・コーエン兄弟が作品、監督、脚色の三冠を、ハビエル・バルデムが助演男優賞を受賞した「クライム・サスペンス」。



・・・いきなりですが。


上記で、「クライム・サスペンス」と括弧つきにしたのはですね。
本作が、前宣で盛んに喧伝されているような犯罪ドラマでは、実は全然ないからです。

そうでないことは、まず、冒頭のベル保安官のモノローグで、観客に示唆されております。
が、その直後から、いきなり追いつ追われつの追跡劇が延々と続くので。

終盤、ベルがエリスを訪れる場面までは、そのへんがイマイチ曖昧になっているんですけどね。

この終盤のシーンで、それが再び、はっきりと観ているこちらに提示されます。

ああ、これは「アメリカ」を描いた映画なんだな、と。
同時に、ああそうか、これはモスとシガーの話じゃなくて、結局は、老保安官ベルの物語だったんだな、と。


この作品のテーマは、エリスが終盤に語る「この国は人にきびしい」という一言に象徴されるような。

いわば、アメリカという国が抱える、魂の荒涼そのものなんです。

この20年来、いやおそらくはそのはるか以前から。
本質的には全く変わっていない、アメリカという国がひたすらに隠し持つ暴力性。

それを、コーエン兄弟は、2時間の尺を使って描こうとしたの。

これはそういう映画。


でね。

そういう作品でございますので、あらためて言うまでもないですが、それはもう。
全然救いがないです。

完膚なきまでに、一切の救いなし。

観ている間も、鑑賞後も、一条の光さえ差し込んではきません。

希望とかやさしさとか、とにかく何がしかの救済めいたものは、期待するだけ無駄です。
最後の最後まで、突き放されて、徹底的に置いてけぼりを食わされて終わります。


もう、これはね。

「やるせない」とか「切ない」とかね。
そういう表現ではまだるい。

あえて言うなら、そうですね。


「もはや手の施しようがない」


・・・ってカンジですかね。


感傷とか、そんなぬるいものは入り込む余地が、1ミリたりともない。
乾きに乾いた、悪意に満ち満ちた世界観。


暗黒でございますよ。


country5.jpg



個人的には、コーエン兄弟のこれまでの作品の中では、『ブラッドシンプル』に一番テイストが似ていると思いました。

サウンドトラックはエンドロールまで、ほぼ一切なし。

登場人物の息遣いと足音、虫の羽音、水音、車のエンジン音のみで緊張感の高まりを表現していく手法とか。

この兄弟特有の職人的なカメラワークや構成の妙、と言った意味では、すっこーんと抜けた荒野の広がりの開放感と、閉塞的なモーテルの室内の、意図的な対比とその繰り返しとか。

終盤、犯罪現場となったドアノブの穴(っていうか何ていうか)に映りこんだシガーの影、とか。
ベルが光を背景に佇むシルエットとか。

随所に、いかにも!なコーエン兄弟らしい、ハイセンスな映像美とセンスが冴え渡っています。
涙が出るほど格好よろしいシーンが山盛りです。

設定や構成に関しては、『ファーゴ』も近いですけどね。

が、あれはまだ、ラストに救いがあったし。
何より、主役の悪党二人がトンチキな分、おもろうてやがて哀しき、みたいな滑稽味が強かったですが。

本作は、より凶悪

『ファーゴ』で、フランシス・マクドーマンドが演じた婦人警官役をトミー・リー・ジョーンズが、スティーブ・ブシェミ役をジョシュ・ブローリンが、ピーター・ストーメア役をハビエル・バルデムが、それぞれ演じているんですけどね。

この映画では、この各キャラクターが担うべき"正義と中庸の体現者"、"欲と業に振り回される小悪党"、"どこかイッちゃっている人語が通じない危ないヤツ"っていう役割が、より進化したとでも申しましょうかね。

先鋭化したっていうか。

そういう意味で、ファーゴの登場人物に連なる系譜の、またその先を見ている気分にもなりますし。
ある種の、パラレル・ワールドを見ているような気にならなくもない。

そしてまた、彼らの姿が、現代アメリカにそのままつながっても見えます。

コーエン兄弟のすごいところって、このすぐれた時代認識というか。
「今」を感じとる嗅覚の鋭さなんだろうな、と思いました。

country2.jpg


キャストは皆素晴らしいです。

こんなにキャスティングが絶妙な映画って、『プラネット・テラー』以来かも(笑)

中でも、絶賛されている通り、立っているだけで非常に強い存在感を漂わせるハビエル・バルデムの演技と役作りは見事の一言。

基本的には無表情でありながら、時折見せる笑顔が、またね。
見ているだけでこちらを緊張させるような迫力があって、なんともいえず凄かった。

「映画史上最悪の髪型のシリアル・キラー」とかって喧伝されておりますが、まぁ確かにあのマッシュルームカットは色々な意味ですごいですが(笑)、違うんですよ。

シガーってのは、別にシリアル・キラーってわけじゃない。
快楽のために殺人を犯しているわけでもなければ、殺しに何がしかの美学を持っているわけでもない。

言ってみれば、ある種の怪物めいた。
非情とか凶悪とか、そんな概念は超越した、人智を超えた存在として描かれているんですね。

ガス・スタンドの親父にコイン・トスを強要するシーンなんて、もうね。
心底恐ろしいです。

実際、相手役のじいさん、本気で怖がってないか?っていう(笑)

不気味であると同時に、なんでも「自力調達」して、何が起こっても自分で落とし前をつけていく姿勢は、ある種の「匠」のような、奇妙な一徹さもあり。


その表情は見ているだけで不快なんだけれとも、しかしその行動は潔く、無駄がなく、実に「合理的」でね。
この合理的ってのが、いかにもアメリカっぽくて、またムカつくんですけどね(笑)

しかし、その確信と無敵っぷりは、ある種の感動すらよびさます、という。
そういうなんとも不思議なキャラクターを、ハビエル・バルデムは、まさに怪演しておりました。

ジョシュ・ブローリンは、ハビエル・バルデムのおかげで割を食ってましたが(笑)、彼もとてもよかった。
この人は『プラネット・テラー』のサド医とか、『アメリカン・ギャングスター』の汚職刑事とか、最近大活躍してますね。

トミー・リー・ジョーンズの、諦めと優しさがないまぜになった曖昧さもリアルでよかったですし、ケリー・マクドナルドは相変わらずオヤジキラーだし。

ウッディ・ハレルソンは期待通りの死に方をしてくれるし(笑)、キャスティングについては、本当に言うことなしです。


とにかく、ぜんっぜん救いがない、鬼のように凶悪無比な作品ではありますが

コーエン兄弟のファンでなくとも、一見の価値はあることを、不肖わたくしが保証いたします。


後からじわじわ効いてくる。

コーエン兄弟の作品はいつもそうですが、本作もそういう映画。

たいへん美しくて、空虚で、そしてとても怖い作品です。


是非ご覧ください。


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