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■MOVIE■『フロスト×ニクソン』 ★★★★★
Thu.02.04.2009 Posted in Movie

frostnixontop.jpg


1977年。

英国のコメディアン出身で、人気トーク番組の司会者デイヴィッド・フロスト(マイケル・シーン)。

彼は、ウォーターゲート事件で辞職した元米国大統領リチャード・ニクソン(フランク・ランジェラ)にインタビューを申し込む。

フロストはアメリカ進出を、ニクソンは汚名返上と政界復帰を賭けてインタビューに臨むのだが……。


『クイーン』のピーター・モーガンの原作・脚本。

2006年にロンドンのドンマー・ウェアハウスで初演され、その後ウエストエンドへトランスファー。
その翌年にはブロードウェイ公演も行われ、トニー賞3部門・ドラマディスク4部門にノミネート。


今回の映画化にあたっては、初演からのオリジナル・キャスト二人が主演。
ロン・ハワード監督がメガホンを取った。





「ブロードウェイで見逃した芝居を映画で観ましょう」シリーズ、その2。
(その1はこちら


いや、観たかったんですよ?
なんたって、わたしの好きなマイケル・シーンが出ているし。


でも、当時のブロードウェイでのわたくしは。
殿祭りと某おっさんにかかりっきりでね。

それどころじゃなかったからね!


って、そういや。
最近のわたしは、わが殿ビル・ナイ様とマイケル・シーンの主演作を交互に観ておりますよ。

なんでやねん。
(好きだからだろ)



まぁ、そんな与太話はともかく。
映画を語りますよ。

すんごく良かったです。
すんばらしい映画です。



そもそもが、これは舞台劇。
しかも、台詞劇でございますから。

その脚本は練りこまれていて、全く隙がなく。
その上、何せ主演の二人は、オリジナル・キャストからですからね。

役が完全に自分のものになっています。


いやァ、久々に映画で、こういう役者の演技を観ました。

巧い/下手じゃないの。
それならもっと巧い人は、別にね。

いくらでもいるの。

というか、巧拙で言ったら、二人とも演技派です。
そもそもが、とっても巧い役者なんですよ。

特にフランク・ランジェラのスケールの大きさといったら、只事じゃございません。


が、やっぱり、そういうのとは次元が違うのよ。

何しろ、「板の上」から数えて、もう何百回と演じてきている役だからねぇ。
カメラの前でも、他の役者とは、役への深度が全く、比べ物にならないほど深いんです。

まぁ、百聞は一見に如かずなんで、その辺は是非。
スクリーンでご覧になってください。

近年、ブロードウェイから映画にトランスファーした数々の作品の中でも、本作はその点がちょっと異色というか。

他のスター映画とは、一味も二味も違います。


frostnixon2.jpg



で、フランク・ランジェラ。

実にブリリアントでした。


わたしは、ニクソン大統領をリアルタイムでは知らない世代の人間でございますので。
彼がリチャード・ニクソンに似ているかどうかってのは、実のところは、あまりよくわからない。

画像や動画を見る限りは、多分。
あまり、似ていないような気がします。


なんだけど、きっとニクソンってこんな人だったんですよ。


前屈みの、いかにもじいさんくさい歩き方、その寡黙な日常。
猫背の背中に漂う哀愁と、一方でその粘着な視線ではっきり印象づける、政治権力への飽くなき渇望と執着。

インタビュー開始後、どんどん雄弁になっていくにつれ、見る間に生気を取り戻していく。
まるで水を得た魚のようなイキイキとした表情。

そして、終盤に見せる、どっと老いた雰囲気。


この落差の激しさ。

大変人間的で、かつ魅力的です。



彼が演じるニクソンを観ているうちに、自分がね。
”ニクソン大統領”というキャラクターを、どんどん好きになっていくんです。

そして、わたしは、その自分の気持ちの動きというか。
共感の進行具合が、何よりも。

ああ、ものすごく面白いなァ、と思いました。


これって、逆プロパガンダじゃないのか?とか。


つまり、物語的には、リチャード・ニクソンという人は。
一瞬の映像が命取りになって、復帰のチャンスを永遠に逃すんです。

彼が栄光の座から完全に失墜したのって、このTV討論の最終回だったわけですよ。

彼は、映像の力を侮っていた、わけでは決してないんだけども。
その恐ろしさや功罪について、ジョン・F・ケネディやその後の合衆国大統領に比べて、熟知していたとも言えない。

そういう、メディア的には過渡期の人でもあった。


だけど、この映画はね。
今になって、彼をある意味、復権させますよ?

だって、多分、大方の観客は皆、ニクソンにシンパシーを抱く。

シンパシーとまでは行かなかったとしても、彼に何がしかの魅力を感じずにはいられないと思うもの。


皮肉だよねぇ。



しかも、これはニクソンの、「真」の姿ではないんですよ。

あくまでも虚像であり、また、フランク・ランジェラという役者を通した鏡像ですよ。

でもきっと、映画が、芝居が、面白ければ面白いだけ。
虚像のニクソンが実像を食っていくんです。


面白いと思いませんか?

わたしは、こんなに面白いことはまたとないと思う。


スクリーン上の役者の演技合戦を息を詰めて見守りながら。
そして、時間と共に自分の気持ちが、刻一刻と変化していくのを感じながら。


わたしは、ものすごく興奮していました。



歴史は繰り返す。
いや、反転するという方が正しいかな。

こんなにダイナミックな形で。


frostnixon3.jpg


彼に対するマイケル・シーンも、とてもよかったです。
フロストの軽薄っぷり、小賢しさ、小心さ、勝気さが、何と言うか、顔に出ている。

張り付いたような笑顔とか、いかにもプライドの高そうな尖った鼻梁とかね。
説得力がありました。

フランク・ランジェラのニクソンは、非常に儲け役なので。
相手役の彼は、その割を若干食らった感は、どうしてもありますが。

でも、基本的に、そもそもの持つ人間力、というか。
底の知れなさと老獪さ、内に抱えた暗黒って点では、ニクソンはフロストを圧倒しているはずなんでね。

これで良いと思います。


ケビン・ベーコンも手堅くてよかったな。
ああ、あと、サム・ロックウェルがまたしても、少々パラノイアが入った役で。

たいへん美味しかったです。



frostnixon1.jpg
これは舞台の画像。非常に恰好良い演出法。



ちなみに、このインタビュー番組ですけども。
放映当時は、4,500万人が視聴したそうです。


何が真で何が偽かなんて、誰にもわからん。

でも、人がその映像を見て感じる「印象」にしたって。

それが正しいと、一体誰に言い切れるだろう?


この時代は、まだ、メディア論もそんなに深く研究も検証も、無論実証もされていなかっただろう。
ニクソンは、気の毒な人だったのかも。


・・・と「思わせられている」わたしは、やっぱり。

ロン・ハワードの思惑に、まんまとハメられているのかもしれないな。



メディアというのは、実に面白いものです。

怖い、などと陳腐なことを言うつもりはございません。
ひたすら、面白い。


メディアのこちら側で仕事している人間の一人として、つくづくそう思う。



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