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■MOVIE■『その土曜日、7時58分』★★★★☆
Sat.01.11.2008 Posted in Movie

devil2.jpg


NY、マンハッタン。

豪華なマンションで、若い妻(マリサ・トメイ)と優雅に暮らす大手企業の会計士・アンディ(フィリップ・シーモア・ホフマン)。

彼は、離婚後の娘の養育費にも窮している弟ハンク(イーサン・ホーク)に、両親が営む宝石店への強盗計画を持ちかける。

2人は計画を実行に移すが……。


原題は『Before the Devil Knows You're Dead』。

「十二人の怒れる男」「狼たちの午後」の巨匠、シドニー・ルメット監督の45作目。



とりあえず、ルメット監督が、御年とって84歳っていう事実に。
心底魂消ました。

84歳って!

普通は、老人もいいとこでしょ?
84歳って言ったら。

その年で、これだけ執拗で粘着で、これだけ完成度の高い、これほどまでに因業な作品を撮れるっていうのが驚きです。

凄いです。

人間の力ってほんと素晴らしい。



本作は、一応、サスペンスの体裁をとってはいますが。

実のところは、ほんのわずかな、小さな綻びから。
一つの家族が、なし崩し的に崩壊していく様を描いた、全く救いのないファミリー・ドラマです。

悲惨です。
まさに地獄絵図。

原題の『Before the Devil Knows You're Dead』ってのは、そのまんま。
主人公であるアンディのことを指す。


というか、クレジット・ロール直前の暗転で、やっと観客は。

映画の冒頭に。

"May you be in heaven half an hour before the Devil knows you're dead"と。
それこそ、まるで祈るように。

呻くように独白した男が、一体誰だったのか。
何故彼がそのように言ったのか。

絶望と共に、愕然と悟るような仕掛けになっています。


凶悪にもほどがある。



"悪人もしなせる悪をはなれて、律法と正義を行はば、その霊魂を生かしむることを得む"


上記の一句をご存知ですか?

これは、旧約聖書の中の一節なんですけどね。
エゼキエル書の第18章第24節。

クリスチャンでもなんでもないわたしが、なぜこの句を知っているかと言ったら。

実はこれ。

ディケンズの『The Mystery of Edwin Drood』で、ジャスパーの登場と共に引用される句なんです。
聖歌隊が大聖堂で、この一節を歌うのね。

それが非常に印象的で、いつの間にやら覚えてしまった。
ジャスパーの・・・というか。

これって、人間の永遠のテーマだよな、と。


で、この映画を観ている間中ずっと。
この句が、頭から離れませんでした。


devil.jpg



わたしはフィリップ・シーモア・ホフマンが好きで。
主演でも脇でも、とにかくイヤミなまでに巧い、この役者の出ている映画にハズレはないと思っています。

で、今回も素晴らしかった。

業の深い男を演じさせたら、もしかしたらこの人は今、世界一かも。

目を背けたくなるような、醜く太った体。
色素の薄い肌と赤毛、青い目。

キューピー人形のように白く浮腫んだ手の表情が、切なくて堪らない。

毎度、こちらの感情を。
これでもかさァこれでもかと、どうだどうだと逆撫でしてくれます。


が、今回彼以上によかったのが、どうしようもないダメ弟を演じたイーサン・ホークでしたよ。


もうほんとダメダメ。
親に甘やかされて、兄貴にも嫁にも娘にも人生にも甘える、これぞまさに、"ザ・ルーザー"。

捨てられた子犬のようなその目は何だ!
このド阿呆が!

・・・と、後ろアタマをどついてやりたくなるような情けなさ。
その不甲斐なさっぷりときたらもう、あまりにも真に迫っていて、可笑しくなるほどでした。

ああっという間に、負のスパイラルに嵌っていくその姿の憐れさ。
ドツボに堕ちるというのはこういうことだという、完膚なきまでのヘタレ具合。


ブリリアント!

きっと半分くらい「地」なんだろう、これが。
そうに違いない。

彼の、ラストシーンの後姿には、もはや。
苦笑しか出てきませなんだ。

ここまでダメだと、笑うしかあるまいて。


父親役のアルバート・フィニーも凄いです。
粘着で、一徹で、かつユダヤ的屈折に溢れてて。

ちょっと痴呆が入ってないか?と一瞬思わせる目の演技とかね。
足元の覚束なさとか。
細かいところがリアルだった。


この親父が、かつての仲間の故買屋を訪ねていくところは、ほんとに。
心底怖いシーンでした。


このシーンに限らず、ニューヨークの真っ青な空の色と明るい陽光とストリートの喧騒と。
対照的に暗く、陰鬱で、静かな屋内の対比が心に沁みます。

マンハッタンとウェストチェスターの、風景の温度差も効果的。


色々ね、何と言うのかな。

嘘っぽいのね。

特に、郊外の景色が、とても美しいんだけども。
虚ろで、上っ面を強調して撮られている。


ニューヨーク・・・てか、アメリカの。
「負」の部分を、否が応にも、こちらに意識させる。

時間とともに、それがまるで、刻印のように脳裏に刻み込まれる。

その、さりげなくもえげつない手法が、見事。
こういうところが84歳の手練手管というか。

老練の技とでもいうべきものなんだろう。



設定と原題から、すでに結末が読めてしまうといえばしまうんですが。
それでも、できるだけオチは知らないで観たほうがいいと思うので、ここには書きません。

ネタばらしを控えるのは、わたしには例外的なことです。


しかし、この映画に限っては。
できるだけ予備知識なしで、映画館の暗闇の中で。

是非ともお1人で。

ルメット監督が容赦なく叩きつけてくるラストに、向かい合うことをオススメいたします。


気力と体力がないときは、悪いことは申しません。

観るのはやめておいた方がいいですよ。



わたくし?

わたくしに関しては、ノープロブレム。
これしきでは、全く。

滅入るようなことはございません。


強いからね。



とにかく傑作。
それも、超・重量級の。


『ダークナイト』と本作が、今までのところ、今年観た中では一番の映画だと思います。


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comments

>きっと半分くらい「地」なんだろう、これが。

なんか、わかりますぅ。笑
これ、うちでも見たいね~と言っている映画なんですが、
そんなにすごいとは!!
DVDを待とうかな~

yurikoさん

わかるでしょう~?(笑)
雨の中でフルフル震えてる仔犬のような風情なんですよ。
ずるい!(笑)
親父にも「He's still a baby」とかって言われてるの。
オマエはいっぺん母親の腹の中に戻れ!ぼけなす!みたいなかんじよ~。

DVDでもまぁよろしいとは思います。てのは、別にカメラワークやVFで魅せるような作品とは違うから。
しかし、やはり映画は基本、映画館で!(力強く主張)

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